1. 問題提起
生成AIの発展により、作曲家の楽曲データを学習させ、その作風を再現する試みが進められている。
近年では、未完成の楽曲をAIによって補完する研究プロジェクトも実際に行われている。
代表的な例として、
ベートーヴェンが未完成のまま残した交響曲第10番を、AIと音楽学者の共同研究により完成させる試みが2021年に行われ、実際にオーケストラによる演奏も実現している。
このような事例は、AIが単に音符を生成しているのではなく、作曲家の楽曲に存在する一定の秩序や作法を学習していることを示唆している。
本研究メモでは、この現象を三層構造解析(TLA)の視点から整理し、
音楽作品における「秩序抽出」の可能性について検討する。
2. 仮説
音楽作品をTLAの枠組みで整理すると、構造として理解できる可能性がある。
3. AIによる未完成作品補完の意味
未完成作品の補完は、次のプロセスで行われる。
① 作曲家の既存作品を大量学習
② 音楽パターン・和声遷移・旋律構造を分析
③ 未完成部分の続きを生成
このプロセスは、実質的には
Layer1データからLayer2秩序を推定する作業
に近い。
ただし現在の研究では、AI単独ではなく
・音楽学者
・作曲家
・編曲家
など人間の専門家が最終調整を行っている。
これは、AIが局所的な音楽生成には強いが、
長大な構造設計(交響曲構造など)にはまだ弱いことを示している。
4. 所感
AIによる作曲研究は、TLAの視点から見ると非常に興味深い事例である。
音楽作品は感性の産物と考えられがちであるが、実際には高度に秩序化された構造物であり、
その構造を抽出することは、文明や組織を分析することと本質的に近い作業である可能性がある。
もし音楽作品において作曲家の秩序生成原理を抽出できるならば、
・音楽
・思想
・組織
・文明
など異なる領域においても、同様に秩序抽出が可能になるかもしれない。
AIによる作曲研究は、
人間の創造活動の背後にある秩序構造を明らかにする試みとして、今後さらに研究の価値が高まると考えられる。